2019.02.14旅する

「江之浦測候所」に立つとわかる 「古代と現代の美術を極めた」贅沢な遊び心

今週末のSOLO WALKは、小田原の「江之浦測候所」へ。

【江之浦測候所】

現代美術作家 杉本博司(すぎもと ひろし)さんが、自分の理想とする場所に、自ら集めた建築物や骨董を、好きなように設えた現代アートの聖地ができたらしいと聞けば、すぐにでも行きたくなるというものです。

4年前に瀬戸内国際芸術祭で直島を訪れたときのこと。再建された護王神社の石室に差し込む光がどんなに神々しく感じられたことでしょうか。
そして地上に戻る道すがら、突然見えた海景色に心を奪われ、その心憎い演出に感動を覚えたのでした。

この島のプライベートヴィラに宿泊して、沖縄の原風景と大自然にゆったりと癒されたいというのが今回の旅のねらいです。

【護王神社の『アプロピリエイト・プロポーション』】

そんな忘れられない神社を手がけた杉本さんの「江之浦測候所」。
オープンしたのは、2017年10月です。

太陽の軌道を体感できるという「光学硝子舞台」

一年で最も日照時間の短い日が冬至。その朝日を真正面に迎えられる位置に作られているのが、「光学硝子舞台」です。ここに陽光が差し込み、舞台全体が輝くというその姿をいちどは自分の目で見てみたいものです。相模湾を一望する贅沢な時間をぜひ味わってください。

“Full Moon Gate” 月を迎える「明月門」

到着したら、まず目に飛び込んできるのがこの明月門です。
これは、杉本さんに根津美術館から寄贈されたという由緒正しき建築物。室町時代に明月院の正門として建てられてから、400年の時を超え、数々の経済人の手に渡り、解体修理をされ、ついにはこの地で私たちを迎え入れてくれています。

現代版「天の岩戸」のような「石舞台」

蜜柑山だったこの土地を「江之浦測候所」を作るため開墾していたときに出土した転石を使って、この石の能舞台は作られたのだそうです。
舞台に続く石橋の軸線は、春分秋分の朝日が相模湾から昇る通り道にあわせてあるのだとか。
ここもまた太陽の通り道なのですね。

「夏至光遥拝(げしこうようはい)100mギャラリー」で杉本氏の写真を見る

海に向かって100m続く片側がガラス壁のギャラリー空間にも、夏至の朝日が抜ける仕掛けが施されているのだとか。
ガラスの向かい側の壁は、むき出しの大谷石でできています。
そこに写真家でもある杉本さんの代表作「海景」シリーズが展示され、贅沢に鑑賞することができます。

70mの隧道を貫く「冬至光遥拝隧道(とうじこうようはいずいどう)」

一年でいちばん日照時間の短い冬至の日に、昇る朝日に向かって作られたというトンネル。
その日は、相模湾の洋上から昇った陽がまっすぐに差し込み、70mを貫き、対面して置かれた巨石が光り輝くしくみになっているのだそうです。
一年に一度の壮大な自然の実験場所ですね。

ヒルトン小田原リゾート&スパにチェックイン

「江之浦測候所」から車で10分ほど高台に登っていくと、今夜の宿「ヒルトン小田原リゾート&スパ」に到着します。
去年7月、天然温泉がリニューアルしたと聞き、スパも楽しめるとあって予約を入れました。

【ヒルトン小田原リゾート&スパ】

興奮冷めやらぬ頭と体に心地よい宿

いつもなら、ひとりでは広すぎる部屋なのですが、さっきまであの刺激的な「江之浦測候所」を全身で感じることに務め、少なからず疲れている今の自分には、ちょうどいい空間かもしれません。
小田原ならではの、寄木細工や提灯などの意匠がそこかしこにあって、土地の文化を感じさせてくれることが、ちょっと嬉しくなります。

相模湾を一望できる源泉たっぷりのスパ

泉質は、「ナトリウムー塩化物強塩泉」、つまり海水成分に似た食塩を含んでいる温泉ということです。
保温効果が高いので、体が芯から温まり湯冷めしにくいのだとか。
湯上りにくつろぐエリアもゆったりとしていて、心地よい空間でした。

夕食は、「小田原おでん本店」に

夕食はかねてから行ってみたかった「小田原おでん本店」へ。小田原と言えば老舗蒲鉾店がひしめく土地ですが、その12店のたねをここで味わえます。
さらに老舗蒲鉾店が市民のアイデアから商品したたねなど40種類以上の創作たねも美味しいのだとか。
もはや予約をしないとなかなか入れない名店なのです。

【小田原おでん本店】

おでん鍋を眺めながらカウンターでたねを選ぶ

おでんの大なべの前で、たねを見ながら悩むのも楽しいもの。まずは「おまかせ」で日本酒を。
上品な出汁とたねの美味しさは、今まで食べたおでんとは別ものでした。

だしは、かつおと昆布。そして塩が決め手!

薬味は、3種類。梅の産地としても有名な小田原ならではの「梅みそ」、「わさび醤油」、「からし」の3つです。
おでんをちょっと欲張りすぎて、〆の茶飯が入らなかったのが心残りです。
次回のペース配分を学びました。

緑に囲まれた居心地の良いカフェ

翌日は、二宮金次郎を祀った報徳二宮神社の境内にとても気持ちの良いカフェがあると聞き小田原城内の報徳の杜に。
樹木を通る風がなんとも気持ちの良い空間でした。お目当ては、「Café小田原柑橘倶楽部」の「みかんスクィーズ」。小田原名産のみかんを絞ったオリジナルドリンク。直球でシンプルな酸味がなんとも言えずおいしく、体に染み渡ります。

【報徳二宮神社】

【Café小田原柑橘倶楽部】

今回の1泊2日の小田原旅の最大の目的は、「江之浦測候所」に行くことでした。
古美術コレクターとしても名高い杉本さんのワンダーランドは羨ましすぎる空間でした。
そして小田原ならではのおいしいおでんを堪能。
週末旅とは思えない、充実した日常からの逃避行でした。

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